下村敦史『失踪者』
📖あらすじ
2016年、ペルー。
山岳カメラマンの真山道弘は単身シウラ・グランデ峰を登っていた。
10年前、クレパスに置き去りにしてしまった親友・樋口友一を迎えに来たのだ。
長い時間待たせて悪かったな…クレパスの底に降り立ち、樋口を発見した真山だったが、
その遺体を前に驚愕する。
極寒のクレパスに閉じ込められた遺体は、
歳を取ることなく凍りついてしまうはず。
しかし、樋口は明らかに10年前より年老いていたのだ!
まさか、樋口はあの時生還していたのか?
氷点下に閉ざされた、謎に包まれし親友の「秘密」に触れたとき、あなたはきっと胸を熱くする!
🌿感想
「10年前に死んだ登山家樋口を、雪山で発見した相棒の真山。しかし彼の遺体は歳を取っていた…!」
という設定にまずは心惹かれずにはいられない。
彼の足取りを掴むうちに大きな真実にたどり着くが、
違ったいろいろなやり方で山を愛する人たちの生き方や現実が真に迫っていてよかった。
普段はあらすじに書いてあるアオリにはへそを曲げて「なんだ大したことないじゃん」と思ってしまうのですが、本作はほんとにラストに胸が熱くなりました。
「お前がまた一緒に登りたいと思うクライマーになりたかった」
もうね…、樋口がめちゃくちゃ口下手で何より山が大切で自分の信念と向き合う孤独な男なんですが、唯一心を許した真山にものすごく真摯な言葉を紡ぐんです。
登山の知識に乏しいわたしでも置いてけぼりにならず読めるし、ミステリーとしての要素ももちろんしっかりしてるし、それでいて泣けてくる。
おすすめです!